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2015年4月27日 (月)

松に吹く風

150427c

 石橋を渡れば坂道の向こうに寺があり、往還をゆく自転車の女学生たちは、道すがらその寺に向かってお辞儀をして通りすぎていくのです。橋のそばには、松の大木があって、見上げるほどに高く、枝ぶりはゆうゆうとしてのびています。

いま風吹きわたれば、松籟はゴーっと低く重いうなり声を発し、大樹が全身でものいうようにも聞こえてくるのです。その声は力強くしかもさわやかに、あたりに満たします。門前に立ってその一点に耳をすませば、静寂につつまれたような気さえしてきます。松は歳月を越えて変わらぬ存在感を示しているのか、その声をきけば、よくぞここまでと、時の流れとそしてまた新たにする思いを感じることもできます。

松風さわぐ丘のうえ古城よひとりなに偲ぶ栄華の夢を、と歌にうたわれたのはいつのことだったか、いまもなお松籟をきくことあれば、春夏秋冬そのときの喜びや憂いが聞こえるようで、そこにたたずまずにはいられません。
これは潮風ふく瀬戸内の郷里の記憶なのでありますが、いまは松はなく、女学生もただ通りすぎていく世になりました。

 

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