« 調和した世界 | トップページ | 世情の波に流されて »

2015年8月 5日 (水)

ひとの心を洗うもの

150805a


 日本の風景には涙がある。みどりの野山があり川がある。その情景は、美しいかな文字で和歌につづられ、いまも人の心を打つ。数学者でエッセイストの藤原正彦さんによれば、日本には涙があり、アメリカには涙がない、ということです。いたるところ、昔からの数えきれない人々の涙がにじんでいる。「若き数学者のアメリカ」の中に書かれています。なるほど、そういった目でみれば、見る景色もまた違ってみえてきます。文化と伝統に育まれた情緒が漂って見える気もします。

ご母堂の藤原ていさんの書かれた、「流れる星は生きている」という本は、いつか読んでみたいと思っていたのですが、改版新刷(中公文庫)がでていたので、さっそく読みました。

愛児三人を連れて、満州新京から釜山を目指す、まさに決死というべき脱出行がはじまる。祖国を同じくするものが、それぞれに生きるために極限の中で葛藤する。足を傷めながら、赤ちゃんを背負い、幼い二人の子も、足を傷めてもう歩けない。それでも、決してあきらめない母は道をひらく策をめぐらす。悲壮な覚悟で、幼子三人を、郷里の大地にとどける。

一年ぶりに見る、駅の鏡に写ったわが身は、みるもあわれな姿だった。上諏訪の駅に、二人の弟がかけてきた。妹もきた。

「姉さん?」

「まあ、てい子」 「おお、てい子」 

両親の声が聞こえたがもう涙で前はみえなかった。

時代の荒波を乗り越えて、勇気をもって生きた人の輝きがある。読むものに、人のこころを洗う涙は、雑念をどこかへかき消してしまうのでした。

 

|

« 調和した世界 | トップページ | 世情の波に流されて »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/126209/62021842

この記事へのトラックバック一覧です: ひとの心を洗うもの:

« 調和した世界 | トップページ | 世情の波に流されて »